立体図形はなぜ中学受験算数で好きになれない単元なのか?

中学受験算数で好きになれなかった単元・ベスト3

こんにちは。
受験算数を学び終えた教え子たちに会うと、当時の思い出話に花を咲かせながら、特に興味があって私から質問してしまう項目があります。

「受験算数の中で、最後まで好きになれなかった単元は何だった?」

感覚的な判断ですが、このような結果になります。

中学受験算数で好きになれなかった単元・ベスト3
第1位 立体図形
第2位 速さ
第3位 数論

今回は見事(?)第1位になった「立体図形」の入試問題を取り上げてみたいと思います。
素材は「慶應義塾湘南藤沢中等部」の問題です。

初等部から中等部へ内部進学する1年生が2019年に初めて誕生しました。
そのため中等部の募集人員が減り、難化が予想される学校です。

1.慶應義塾湘南藤沢中等部の立体図形

図の太線は、ある立体の展開図である。

(1)この立体の体積を求めなさい。
(2)この立体を6個用いて、すきまなく組み合わせると直方体ができる。
この直方体の表面積を求めなさい。

※実際の問題では(3)までありましたが、今回は省略します。

2.立体の体積の求め方

「展開図」と言っているわけですから、立体にしなければなりませんね。
「同じ部分」に着目しながら、展開図をながめてみましょう。

ポイントは赤部分、黄部分が同じ形だと気がつくかどうか。
底面(または側面)になることがピン!とひらめきますね。

そして、同じ色の図形どうしが向かい合うことをイメージして、頭の中で組み立てていきます。

下記の図形を思い浮かべることができましたか?


1辺1cmの立方体が4個組み合わさった、体積4㎤の立体ができました。

3.直方体の表面積の求め方

では(2)に進みます。
慶應湘南藤沢中レベルの学校では、この問題ができるかどうかがポイントになります。

「この立体を6個使って、直方体ができる」と言っています。
本当にできるのかなぁという疑問が先行してしまいそうですが、「できる」と断言されているので、そのつもりで考えを進めましょう。

実はこの問題のポイントは「正解となる直方体をイメージしないこと」です。

この立体の場合、頭の中で

を6個組み合わせて大きな直方体を作るのは、なかなか容易ではありません。
時間もかかるでしょう。
入試では制限時間もありますので、現実的な作戦とは言えません。

そこで発想の転換が必要になります。

体積から考えてみましょう。


をどう組み合わせたとしても、完成する直方体の「体積」は同じになるということはわかりますよね。
1個4㎤の立体を6個使うので、体積は次のようになります。

4㎤×6個=24㎤

つまり、体積24㎤になる直方体の「たて×横×高さ」の組み合わせを考えればよいのです。

それは以下の6通りしかありません。

①   (1cm×1cm×24cm)
②(1cm×2cm×12cm)
③(1cm×3cm×8cm)
④(1cm×4cm×6cm)
⑤(2cm×2cm×6cm)
⑥(2cm×3cm×4cm)

(1)の立体をすきまなく組み合わせて直方体になるのですから、①~④はあり得ないことがわかります。
「1cm×・・・」とあれば、(1)の図形の
この面を平面にならべて四角形に収めることになりますが、どう並べても四角形にはならないからです。



上から見るとこのような感じ。
どこかで1マス欠けるので、完全な四角形にはならない。
となると、残りは⑤、⑥になります。

ここで、元の図形を組み合わせて6cmの辺を作ろうとしても、独特の形が影響して凹みなく6cmの辺をつくるのは不可能なので、⑤はあり得ないこともわかります。

ということで、あとは⑥の直方体の「表面積」を求めればよいので(2cm×3cm+2cm×4cm+3cm×4cm)×2面=52㎠(答)となります。

4.まとめ

設問(1)は展開図から見取図をイメージする力が必要になります。
難易度は標準。
さまざまな中学の入試問題で問われるレベルです。

設問(2)は設問(1)からの流れで見取図をイメージする問題に見せかけて、視点を変えて体積から求めるといった論理的思考力が求められている、難易度の高い問題です。
なお、このような高度な空間認識力を要求する学校は、超難関校の灘中学校だけです。
ですから、中学受験には、あまりにも複雑過ぎる図形のイメージ力を身につける必要はないと考えて差し支えないでしょう。

むしろ、「これは見取図をイメージするよりも、別の方法があるんじゃないか?」と気付けるかどうか、そういうふうに視点を切り替えるスイッチを持っているかどうか、が大切です。

出題されている以上、正解を出すためのヒントが絶対ある、と信じてあれこれ考えを巡らすトレーニングも必要で、そんなことを子どもたちと共有していくことも、ライブで行っている授業の役割だと考えています。

ちなみに設問(2)の見取図をご紹介します。
色が6色あります。

つまり6個が組み合わされていることがわかりますね。
見てしまえば簡単ですが、これを知らずに頭の中だけ(鉛筆を使って書いて見てもよいですが)でイメージするのは難しいと思いませんか?

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