
AIとは違う、人間の特徴を生かした記憶法
AIによるコピーライターのAICO(アイコ)誕生のニュースを受けて
AIの文章の書き方とはどんなものなのかを調べてみました。
そこで見えてきたことを、国語の勉強のヒントにするシリーズの3回目です。
前回、AIと人の記憶法を比べてみました。
人間の記憶法の特徴は、コンピューターと同じような単純暗記ではなく、新しく覚える言葉と過去の記憶を関連付けて覚えるところでした。
この記憶法を生かした国語の勉強法は何だろうかと考えてみました。
まずピンと来たのが「短文作成」です。
「口火を切る」という言葉で短文を書く例を詳しく説明してみます。
過去の記憶を題材にした勉強法です。
2. 体感型の記憶として言葉を覚える
① 生徒は家に帰り、ノートをひらいて「口火を切る」と、まず書きます
② 次に「口火を切る」の意味を辞書で引きます
③ 辞書で引いた意味をノートに書き写します
④ 調べた言葉を使って、短い文章を書いてみましょう
⑤ 例文を読む
⑥ 例文を自分の話題に置き換えて書く
⑦ フィクションをまじえて書いてもOK
⑧ どうしても短文のアイデアが思いつかない
3. まとめ
1. 作る短文は身近なできごとがよい
日頃、わたしは授業で読んだ文章に「覚えてもらいたい言葉」が出てきたら、その言葉を使った短文作成の宿題を出しています。
宿題で作る短文は、自分の身近なできごとがよいです。
なぜなら、新しい言葉を覚えるためには、自分のことと関連付けた方が記憶が定着しやすくなるからです。
2. 体感型の記憶として言葉を覚える
新しく覚えた言葉は、記憶の巨大なネットワークに収納されます。それは巨大な倉庫の中に小さな品物を一つ保管するのと似ています。
保管の際、保管場所までの通り道で目じるしになるものをたくさん覚えたり、作ったりしておくと、次回行くときにスムーズですよね。
保管箱の番号を覚えるのもいいですが、それは単純記憶なので、人は忘れてしまいがちです。
でも、途中にあるドアノブのひんやりした手ざわりや、通路に飾ってあった絵など、感覚的、体感的な記憶と関連付けすれば、たどり着きやすい。
つまり自分の記憶として定着させることができるのです。
短文作成はこれと同じです。
経験した過去の記憶を使って、言葉を自分のものにする方法です。
① 生徒は家に帰り、ノートをひらいて「口火を切る」と、まず書きます
② 次に「口火を切る」の意味を辞書で引きます
③ 辞書で引いた意味をノートに書き写します
「口火を切る」・・・・・・「ものごとを他より先におこなって、きっかけをつくる」
ここまでならよくある辞書引き、意味調べの宿題です。
これでは機械的に行うだけで終わってしまいます。
「機械的」な作業はコンピューターにもできることです。
「コンピューターにできないやり方をする」
これが今回のテーマです。
④ 調べた言葉を使って、短い文章を書いてみましょう
言葉はその用法を身につけて、ようやく自分の語彙になったと言えます。
言葉を覚えたタイミングで、用法も覚えるようにしましょう。
短文を書くときですが、すぐに始めるのではなく、辞書に載っている例文を参考にするとよいです。
⑤ 例文を読む
例文が「先生の説明が終わると、佐藤さんが質問の口火を切った」と載っていました。
例文を読むと「口火を切る」を使う場面のイメージがわいてきますね。
単に言葉の意味だけを知ったときよりも、より理解できます。
⑥ 例文を自分の話題に置き換えて書く
例文の場面と同じようなことが自分のまわりのできごとにないか。
自分の身のまわりに置き換えて考えてみてください。
思い浮かんだできごとを書き出しましょう。
授業中にあったできごとをあなたは思い浮かべたとしましょう。
そして、書いてみたのが次の短文でした。
「わたしたちの班の発表が終わると、田中くんが口火を切って発表内容への反対意見を述べた」
これで宿題としての当初の目的は達成されました。
しかし、欲を言えば、もっと詳しく文を書き足すとさらに良くなります。
そうするとなぜ良いのか。
表現力を身につけるトレーニングにもつながるからです。
文を書き足すときのテクニックは「接続語」や「感情を表す言葉」を使うことです。
⑦ フィクションをまじえて書いてもOK
一字一句かならず実際に起こった事実だけを書く必要はありません。
こんなことなら、まわりでありそうだなという脚色、フィクションをまじえてもかまいません。
短文作成の目的は事実を書き写すことではなく、新しい言葉を使って身近な題材を文章にすることにあります。
気楽に思いついたことを書き出してほしいのです。
短文作成の宿題を出すと、自分の身のまわりで起こったようなフィクションを、ノート1ページにびっしりと書いてくる生徒がいました。
最初、国語が苦手だと口ぐせのように言う生徒でした。
ですから、短文作成の宿題を書いてきたとき、その熱意を褒めました。文章は「てにをは」がおかしいところがありました。
でもまずはそれでいいのです。
彼はこの宿題でフィクションを書くことの楽しさを知ったようでした。
短文作成を通して文章全般、「書くこと」に慣れていきました。
当初やり方がわからないからと言って無回答で出していた記述問題に手をつけるようになりました。
作文も率先して取り組むようになっていきました。
⑧ どうしても短文のアイデアが思いつかない
身近なできごとで気楽に書き始めることをおすすめします。
しかし、どうしてもアイデアが思いつかない場合は、ネットで言葉を検索して、題材を見つけて書き写してもかまいません。
そのとき、「ニュース検索」をすると、記憶と関連付けしやすい題材がたくさん出てきますよ。
たとえば、「口火を切る」でニュース検索をかけると
「大谷が四回に口火を切る安打を放った」
などが表示されました。
ニュースはイメージがわきやすく、記憶に残りやすいできごとの宝庫です。
3. まとめ
いかにイメージと関連付けするか。発想を広げてゆくか。それがわたしたち人間の場合の言葉の覚え方です。ぜひ実践してみてください。
短文作成のポイント
・例文を自分の話題に置き換えて書く
・フィクションをまじえて書いてもOK
・ネットで言葉をニュース検索してみてもよい。