センター試験過去問対策!現代文勉強法 東大ロボットは小林秀雄を解けるか?

図書館で本を探す女の子

2013年センター試験 国語 小林秀雄『鐔(つば)』


人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」: 第三次AIブームの到達点と限界

1. 東ロボくんは国語が苦手

皆さんは「東ロボくん」を知っていますか。

東ロボくん – Wikipedia

2011年から国の研究機関が東大入試合格を目指して開発を進めてきた人工知能(AI)のことです。

東ロボくんは模試の偏差値が数学で76、世界史で65を越える秀才ぶりを発揮し、全国の大学の8割にあたる472の大学で「合格率80%以上」を示すA判定を獲得するほどの好成績を収めました。

しかし、そんな秀才東ロボくんにも苦手な科目があり、苦手科目克服ができず、2016年東大合格を目指すことを断念したそうです。
その苦手科目とは国語です。
特に小説が苦手なのだそうです。

2.東ロボくんの国語の解き方

東ロボくんが国語の問題をどう解いているか説明すると、設問文と選択肢の「文字の重複率(オーバーラップ)」や「文の長さの妥当性」で選択肢を判断しているそうです。

この方法だと、評論文のような論理的な整合性を問う問題では、50%以上の正答率を獲得するそうです。

しかし、東ロボくんはあくまで「統計的判断」しかできません。
実は東ロボくんは文章をまったく読まないで問題を解いています。
一切文章の意味を理解していないそうです。

これでは評論文の選択肢問題はできたとしても、小説は解けるはずはありません。

3.東ロボくんを反面教師に

入試の小説は文中のセリフや行動などから、その背後に隠れた登場人物の心理を推し量って答える問題ばかりです。

「顔を真っ赤にする」とあっても、その場面では恥ずかしいのかもしれませんし、怒っている可能性もあります。
どのような意味で使われているのか文章を読めば前後の文脈でわかりますが、東ロボくんにはそれができないのです。

文章読解が現在の人工知能では困難なため東ロボくんの研究開発はストップされたのでした。
実はこの東ロボくんの解き方を反面教師にすることこそが、センター試験の国語を攻略するカギです。

なぜなら、東ロボくんの解き方こそ、国語が苦手な人の問題の解き方とよく似ているからです。

【東ロボくんの解き方】
①本文をまったく読まない。
②本文と選択肢との重複率を計る。
③論理的な選択肢を選ぶ。
④小説(心理や意図)は読めない。
【国語が苦手な人の解き方】
①本文をよく読まない。
②選択肢の中から本文の言葉を探そうとする。
③一般的で、もっともらしい意見の選択肢を選ぶ。
④本文で筆者が何を伝えようとしているかを考えようとしない。

4.解法テクニックは通用するか

国語の問題解法には文章の最初と最後だけを読んで時間をかけずに解くような「解法テクニック」があります。

「解法テクニック」と「東ロボくんの解法」も本文を読まないという点でよく似ています。
テクニックの中には本文と選択肢を比較して、同じ言葉がどれくらいの割合あるかを見て正解を判断する方法もあります。

この方法も東ロボくんとよく似ています。
東ロボくんが評論文では一定の成果を出していることからも分かる通りテクニックを使えば解ける評論文は実はかなりあります。

しかし、小説はこのようなテクニックが通用するかというとそうとも言えません。
そして、今回は評論文の中にも東ロボくんや解法テクニックがあまり通用しない文章があることをお伝えしましょう。

先走って言うと小説のような読み方が必要な評論文というものがあるのです。

5. 小説のような評論文とは

それがセンター試験の過去問2013年の評論文の小林秀雄『鐔(つば)』です。

この年の評論文は昭和の文芸批評の第一人者である小林秀雄(1902年‐1983年)の文章が出題されて話題になりました。

小林秀雄全集〈第12巻〉考へるヒント

小林は何十年も昔から大学入試の定番の出題作家でした。
お父さんお母さん世代だけでなく、おじいちゃんおばあちゃん世代もが大学受験を経験した頃から多くの受験生を苦しめて来た入試問題が小林秀雄の文章です。

小林の文章は一般的に難解だと言われています。
難解に感じるのは、小林の評論文の文体や文章構成が一般的な評論文と異なっているからです。

小林の文章は、一般的な評論文の特徴である「明解さ」や「結論をはっきりさせる」ことを必ずしも意図していません。
ですから、評論文と考えるよりは、硬質な内容を扱った「随筆文」という認識を持ったほうが良いでしょう。

小林の文章は抽象的な説明をしていると思ったら、突如として私小説のような感じの体験談が文章の途中に入ってきて、「心情」や「比喩表現」を読み取ることが必要だったりします。
初めて読むと面食らうでしょう。

このような小説的な読解が必要なため、評論文の解法テクニックを使って「処理」しようとしてもうまく行かないのです。
小林の文章はテクニックで「処理」するのではなく、正攻法ともいうべき文章を一文一文しっかりと読んで、文脈から筆者の意図を類推していく読解法しかありません。

これは文章を読む上で最も基本的な態度です。

皆さんも好きな小説を読むときは一文も読み飛ばさず、じっくりとその世界に浸るように小説を読むと思います。
好きな小説を読むときと同じように、じっくりと味わうような文章の読み方をして欲しいという意図で書かれたのが小林秀雄の評論文なのです。
ですから、小林の文章は最後に筆者の意見が明確にまとめられたりはしないのです。

小林は読者に「考えるヒント」を示すに留まり、読者の想像力、思考力に委ねるように文章は終わります。
最後の段落だけ読んで全体を推測しようというテクニックはここでは通用しません。

考えるヒント (文春文庫)

6.実践 センター試験を読解

センター試験の出題者は、テクニックの通用しない小林の評論文で受験者が文章をしっかりと読み込む力があるかを測りたかったのでしょう。

ただ、センター試験の限られた時間の中では、小林の文章を熟読するというのは大変なことです。

受験者は例年より解きにくいと感じたでしょう。

この年、国語の平均点は前年と比べて約17点も下回りました。
センター試験で出題された『鐔(つば)』という文章で小林は、骨董品の刀のつばをただの「装身具、美術工芸品」として見るのではなく、つばが作られた当時の武士たちが、生死のはざまに使った凶器ともいうべき「実用品」として見ます。

つばに「生命感」を見出そうとするのです。

文末にそれまでの文脈と異なった鷺(さぎ)が頭上の空を舞う旅先での体験談が意味深に付け加えられます。

絵のように木に留まって動かないままでいた鷺が突如として頭上を舞った瞬間の「生命の躍動感」を、つばの彫り物に感じていた「生命の躍動感」と重ね合わせて小林は見ているのです。

非常に比喩的で文学的な構成です。

このような読み取りは文章全体のつながりをじっくり追って読んでいけば分かるのですが、最初と最後の段落を読んで性急に論旨を見極めようというテクニックに走ったりすると、まったく意味が分からず、制限時間が迫っている試験場では、混乱するばかりです。

7.問われる小説的な読み方

センター試験の設問4をみると「比喩」の読み取りを問う問題が出でいます。
比喩は本来なら「小説」で問われることが多いです。

問4 傍線部C「もし、鉄に水をやれば、文様透は目を出したであろう。」とあるが、それはどういうことをたとえているか。最も適当なものを選べ。

たとえとは、「Aというものを説明するために、似たBというものをあげること」ですから、同じ話題を説明するのにそれまでとは違った言葉を用いて説明しているのです。
ただ単に本文と同じ言葉があるから、この選択肢が正解だろうと選ぶ方法では比喩の読み取り問題は答えられないのです。

もちろん、東ロボくんには答えられないのです。
だからといって、文学的才能がないと読み取れないかというとそうではありません。

傍線部の前後と選択肢をじっくり比べて読めば解くことは難しい問題ではないのです。

思考訓練の場としての現代国語―受験国語

8.AIができないことをしよう!

このように見てくると「処理」することを拒む文章が、小林秀雄の文章だと言うことが分かるでしょう。

AI時代が到来する今だからこそ、問われる人間的な読解力ということで小林秀雄の文章がセンター試験に登場したのだと考えられないでしょうか。
大学が本当に欲しい学生はどのような学生かを考えると、AIができないことができる人材であり、テクニックで急場をしのぐような人材でもないでしょう。

文章をしっかりと読む実直さや人間的な理解と応用が効く力を持った人材でしょう。
AIができない「筆者の意図の読み取り」は、人間が読む場合でも「解法テクニック」を使っていては限界があります。

ショートカットはできません。
筆者が何を言いたいのかを細部から読み取ることに集中しましょう。

そうすれば、文章全体を貫いている流れがきっと見えてきます。

9.まとめ

① ふだんからしっかりと文章を読みこなす習慣をつける。
② 文脈から筆者の意図を類推しながら文章を読む習慣をつける。
③ 性急に本文と選択肢の読み比べに走らない。
④ 設問に答える前に、一呼吸おいて自分なりに筆者が何を言いたいのかを整理する。
⑤ 傍線部のみの判断でなく、文章全体とのつながりを答える際の根拠にする。

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