令和4年度 特色検査共通問題分析

神奈川県公立高校 適性検査分析

総評

極端に難しい問題は減ったが正確に解くには高いレベルの読解力・思考力が必要
全体としては極端に難しい問題、解法の手掛かりがつかみづらい問題が減ったと言えます。手も足も出ないような問題は少なく、工夫の余地が残された問題も多くありました。
共通問題は昨年度に比べると極端な計算や数学的な要素がなく、どちらかと言うと読解力を中心とした英語・国語の力が問われていました。
一方で後半の選択問題はどの問題にも数学の要素がメインとして詰め込まれている問題構成となっていました。

問1(共通)

今年度も英語の長文読解 いかに丁寧に速く読めるかが鍵
北極海を題材にした会話文の問題。簡単な数値計算は今回も出題されました。今後もこの傾向は続いていくと考えるべきなので計算に使いそうな単語や表現は押さえておくとよいでしょう。
正誤問題や、適文補充問題は丁寧に解きすぎて時間を失いがちです。内容そのものは決して難しくありませんが、スピードも要求されていることを意識しましょう。
対策としては結局のところ、普段の英語の勉強をどれだけ行うかにかかっています。この中にはリスニングやスピーキングも含まれます。自分の勉強を振り返りベースとなる英語の基本的な能力を伸ばしていってください。

問2(共通)

国語の文章読解をベースとした複合問題 昨年に比べると数学の要素が減り、解きやすくなる
和紙と洋紙に関する問題でした。和と洋の建築様式やその考え方は、国語の現代文でもよく出題される題材です。ただし、要求されていたのは知識ではなく、文章を読みとる力でした。
問題構成は語句の穴埋めや、本文にふさわしくない発言を選ぶなど、例年通りのものが多い中、座標の概念を和室の間取りに落とし込む問題がありました。これは文章の中の少ないヒントと図から情報を読み取る必要があり、情報処理と座標の根本的な理解を問われていました。
全体としては計算問題がなくなり、昨年よりも解きやすくなったといえます。

問3(選択)

主要5教科に加え家庭科も含まれた複合問題 数多く出てくるグラフの処理がポイント
体重をテーマにした会話文から、栄養素からメニューの作成、小数点以下の数の扱いなど幅広く出題されました。
ポイントは随所に出てくる表やグラフの処理です。一目見て内容を瞬間的に把握することは困難なので、メモを加えながらそれぞれが表す内容をわかりやすくしていくことが有効です。
(ア)は食品群の2群・3群が伸びていることをグラフから読み取り、牛乳・緑黄色野菜を多く含むメニューを選びます。
(オ)と(カ)は小数点以下のどの位が信用できる値なのかを判断。
(キ)も「100g単位で測ることができる」の部分をしっかり把握しておけば手がかりがつかめます。
受験生があいまいにしがちな「有効数字」という考え方を正しく認識しているかを試されていたと解釈することもできる問題でした。

問4(選択)

切り紙・サイコロ・カードなど遊びを数学的に処理する問題
知識ではなく読解力で処理できる言葉の問題と、対称性を意識した図形の問題で構成されています。
「切り紙」という小さい頃にだれもが行ったであろう遊びを線対称の問題として考えさせています。複数の対称軸を正しく認識することがポイントですが、特色としてはそれほど珍しい問題ということはなく、過去問の演習や類題等で経験したことがある受験生も多かったでしょう。
後半の八角柱を転がす問題はルールを別の解釈に直してしまうと簡単です(立体を奥に転がす=展開図では下に行く、立体の左右を逆にする=転がす上下方向を逆にする)。図形の特性と問題の読解力をバランスよく問われている問題でした。

問5(選択)

パズル的な要素の規則性ベースの問題
(ア)は美術を題材にベン図を用いた問題と見せかけて、最小公倍数から処理する問題です。内容を把握しやすい問題で、具体的に最小公倍数の周期分の状況を書き表すことができれば完答可能です。
(イ)は立方体を組み合わせる問題です。「のりで接着した面の数」は「接着していない面の数の反対」という発想が出てくれば把握が容易になります。
(ウ)は有名な21ゲームをもとにした問題でゲームのルールを論理的に考える問題でした。日ごろから似たような思考を行っている人には解きやすい問題であったかもしれません。

問6(選択)

スポーツを数学的に考えていく問題
リンク装置は初めて見る構造に手間取ったかもしれません。しかし本質は三角形の成立条件を考える問題で辺の長さから処理すれば正解につながります。具体的な数値が複数与えられているので、まずはこれらを代入し状況をつかむことがポイントです。反比例の考えを用いた歯車の要素が追加された問題もありました。
後半はバスケットのパスとシュートの分析問題です。資料の整理・一次関数のグラフ・三平方の定理と多くの要素が詰め込まれています。
「データの分析」は今後も入試で重視されるであろう項目です。箱ひげ図や中央値などの用語に苦手意識がある人は今のうちに弱点克服が必須と言えるでしょう。最後のボールが入る角度を表の数値から実数値で計算する必要があり、計算が煩雑でした。

問7(選択)

比較的手が出しやすいものの完答までは困難な問題構成
理科の状態変化に関する問題、日本の貿易額と輸出入額の判断、切断された球体の体積、そして状況が特殊な速さに関する問題で構成されています。
例年の問7は極端に正答率の低い問題が複数組み込まれでいたのに対し、今年度は比較的手は出しやすいものの完答までは困難という印象です。どの問題も通常の数学や理科の知識を正しく理解した上で、応用的な処理・思考を求められています。
鉛直分布など初見のグラフが特色検査で出題されるのは定番です。日ごろから様々な軸を持つグラフを経験しておくとよいでしょう。総合的にはやはり問7が一番解きづらい問題がそろっていたと言えるでしょう。

<対策>
特色対策は5教科の対策と異なり、各問題ごとの直接的な対策は不可能です。日頃行っている通常の勉強をどれだけ深く、正しく行うかが重要です。少しでも疑問に思ったことをそのままにせず、学問を正しく理解する「探求心」が求められているといえるでしょう。
過去問の演習は思考を広げるうえで非常に有効です。Qゼミでも対策授業を行っていきますが、大事なことは自分の考えと模範解答や先生の解き方がどのように違っているかを知ることです。まずはすべての根本となる各教科の知識を丁寧に身につけていってください。

令和4年度 横浜サイエンスフロンティア特色検査問題分析

【問題構成】

問題1 データの読み取り
国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果の推移について

問題2 英語の会話文(資料の読み取り)
中国の算術「天元術」とそれを改善した「傍書術」に関する会話と資料について

問題3 データの読み取り
日本と世界のICTの利用とPISA3分野(読解力、数学・科学リテラシー)に関する記
述問題

問題4 プレゼンテーション資料の作成
文化祭で発表する科学に関する出し物についてのプレゼンテーション資料の作成

<総評>
例年通り、あるテーマについての対話文と、それを元にした大問が4問。最後は資料の作成問題となります。大問の数は変わりませんが、小問の数に変化が見られました。
昨年計8問の出題に対して今年は計11問と3問の増加。出題の仕方にも変化が見られました。記述式の問題も2問から3問に増加、問題ページ数も1ページ増え、昨年以上に素早い処理が求められた問題構成だったと言えます。
ただし、問題ごとの難易度は決して高くはありません。最後の問題4は恒例のプレゼン・資料作成問題ですが、こちらは例年通りの問題内容と言えます。問題文の条件に沿って資料を作成していくため、ここで時間をたっぷり使いたいところです。問題3までをいかに短時間で正確に解くかが重要だったといえるでしょう。

各大問ごとの分析

問題1 データの読み取り

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果の推移について
資料を読んで正しい内容を選択肢から選ぶ問題。
小問数が3問から4問に増加。さらに、例年選択肢から1つを選択する問題だったのが2つ選択する問題に変更されました。選択するものが2つに増えたので実質8問になったといえるでしょう。
難易度はそれほど高くはありませんが、例年より素早いデータの処理が必要な問題です。ここで時間をかけてしまうことは避けたいところです。
選択肢とデータを比較すれば答えが出せますので、素早いデータ処理で時間を節約したい問題でした。

問題2 英語の会話文(資料の読み取り)

中国の算術「天元術」とそれを改善した「傍書術」に関する会話と資料について
普段聞きなれない算術に関する言葉が並んでいますが、問題文をしっかり読むことで確実に答えが出せる問題です。
英語の会話文で上記の算術に関するルールが図とともに書かれています。英文の難易度もそれほど高くはありません。
小問数が3問から4問に増えましたが、計算をする小問は無く、英文をしっかり読み、算術のルールを把握することで答えが導き出せます。ただし、注釈で確認はできますが、数学用語に関する英単語や熟語が数多く出てきています。普段から対策としてそういった単語や熟語に触れていた人はスムーズに読めたのではないでしょうか。

問題3 データの読み取り

日本と世界のICTの利用とPISA3分野(読解力、数学・科学リテラシー)に関する記述問題
データを元に指定された条件の元で記述する問題です。
小問が1問から2問に増えました。素早くデータを読み取り、それを表現する記述力が問われます。
小問が2つになったことで、1問あたりに必要なデータの数は少なくなっています。
また、使う語句や書き出しの仕方などが昨年より細かく指定されているため、そこから何を書けばよいかがある程度推測できます。このようなデータを元に記述する問題を解き慣れているとそこまで難しく感じなかったはずです。

問題4 プレゼンテーション資料の作成

文化祭で発表する科学に関する出し物についてのプレゼンテーション資料の作成
文化祭の出し物をクラスで決めるため、クラスの生徒に向けたプレゼン内容を考える問題です。
例年通り作成における条件が細かく決まっているので、それを踏まえた上で資料を作成します。
サイエンスフロンティアの特色検査において最大の特徴といえるこの問題に一番時間をかけるべきでしょう。
細かい部分は違いますが、条件はほぼ例年通りの内容といえます。過去問等を使ってしっかりと対策をすることで、どのような物を作れば良いかわかります。
対策するときはこの問題に特に焦点をあてて取り組むと良いでしょう。

<対策>
サイエンスフロンティアの特色検査で必要なこと。それは「速読力」「情報処理能力」「表現力」です。
「速読力」は問題文を素早く正確に読む力ですが、日本語の文章の他に英文でできるようにする必要があります。英文自体は中学3年間の勉強を元に入試対策をしっかりやっていれば対応できますが、英文を素早く正確に読む練習もしておく必要があります。
また、問題には数々の資料やデータがあり、それを元に解いていく「情報処理能力」が必要になります。特にサイエンスフロンティアは素早い処理が求められます。なぜなら、最後の資料を作る問題に時間をかけなければいけないからです。それまでの問題を早く正確に解けないと、最後の資料作成問題をじっくり取り組むことができません。過去問を演習するときには、時間を計ってやるなど時間に対する意識をもって取り組みましょう。
最後に、記述問題を解くための「表現力」。これは自分の考えを伝えるための「プレゼン力」とも言い換えられます。記述問題、特に最後の資料作成の問題ではこの能力が必要不可欠です。普段から様々な問題に対する自分の考えをアウトプットする練習をする必要がありますが、そのためにはインプットも重要です。例えば、テレビのニュース番組などでは1つの話題に対してコメンテーターが様々な意見をかわします。ネットの世界でも様々な意見が飛び交っています。そういった意見などに積極的に触れることで、自分の中の「引き出し」が増えていき、結果アウトプットにつながります。普段の生活の中でも様々な意見に触れる機会は多くありますので、積極的にインプットして欲しいと思います。

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