大学受験における英検活用法

①大学受験における英検の重要性:なぜ今、英検が「合格に役立つ」のか?

近年、大学入試において英語外部検定の利用が広がっており、その重要性は高まっています。2024年には国公私立大学全体の60.6%が英語外部検定を利用し、特に私立大学の一般選抜での利用が増加しました。この傾向は2025年度も続き、実に478大学、全体の63%が利用する見込みです。これは、英語の4技能(読む・聞く・書く・話す)を評価する動きが、大学入試において一層進んでいることを示しています。

数ある英語外部検定の中でも、受験生が最も利用しているのは実用英語技能検定、通称「英検」です。2024年の一般選抜では、英語外部検定を利用した受験生の91.6%が英検を選んだことが明らかになっています。高校1年生の時点で7割以上が何らかの英語資格・検定試験を受験しており、そのうち8割が英検を受験しているという調査結果も出ています。この事実は、英検が日本国内で広く認知され、学校教育とも連携しやすい試験として定着していることを示しています。文部科学省が英語4技能評価を推進する一方で、大学入学共通テストでの英語民間試験導入が見送られた状況下でも、各大学が個別入試や学校推薦型・総合型選抜で英検活用を拡大しているのは、大学側が英検を信頼性が高く、かつ受験生にとっても利用しやすい試験であると認識しているためと考えられます。このため、生徒や保護者にとって、数ある英語外部検定の中から「どれを選ぶべきか」という問いに対する実践的な答えの一つは「英検」であると言えるでしょう。英検は、対策用の教材が豊富にあり、学習を始めやすいという点も、この地位を後押ししています。

英検は単なる英語力の証明に留まらず、大学受験を有利に進めるための「有効な手段」として機能します。英語の得意な受験生はもちろん、英語力を入試で活かしたいと考えている全ての受験生にとって、英検は合否に影響を与える要素となり得ます。
英検が大学入試で具体的にどのように評価され、どのような優遇制度があるのかを詳しく解説します。

②英検活用の具体的なメリット:大学入試での優遇制度を解説

大学受験において英検のスコアや級は、主に以下の4つの方法で活用され、受験生にメリットをもたらします。

  1. 出願資格の獲得:受験の条件を満たすために
    英検の一定以上の級やCSEスコアを取得していることが、特定の大学や学部の出願条件として定められているケースがあります。この場合、英検の条件を満たしていなければ、その大学・学部に出願できません。そのため、志望校選びの段階から英検の目標級やスコアを意識することが重要です。
  2. 英語試験の負担軽減:他科目対策に時間を充てる利点
    英検の級やCSEスコアによって、大学が独自に実施する英語の個別試験が免除される制度があります。この制度を利用できると、入試当日の英語試験の負担が軽減されます。その分の時間と労力を他の主要科目(国語、数学、地歴公民など)の対策に集中させることが可能になります。限られた受験期間の中で効率的に学習を進める上で、これはメリットとなります。多くの場合、試験免除は後述の「得点換算」とセットで提供されます。
  3. 得点加算・換算制度:入試での得点向上に貢献
    英検の級やCSEスコアが、入試の総得点に加算されたり、英語科目の得点に換算されたりする制度も広く採用されています。大学によっては、受験生が当日受験した英語試験の点数と英検の換算点のうち、高得点の方が採用される「高得点採用制度」を設けている場合もあり、受験生にとってリスクを分散できます。特に、英語の得点が満点に換算されるケースは有利であり、合格可能性を高めることができます。
  4. 総合評価での考慮:推薦・総合型選抜でのアピール材料
    総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜において、英検のCSEスコアが合否判定の判断基準の一つとして考慮されることがあります。一般選抜でも、英検CSEスコアを大学独自の換算点として使用したり、共通テスト英語の得点と比較して高い方を合否判定に利用したり、あるいは合算値で判定したりするケースが見られます。
  5. CSEスコアとCEFRの理解:現代入試で重視される英語力の指標
    英検の成績表には2020年度からCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のレベルが併記されるようになりました。大学によっては、級の合否やCSEスコアだけでなく、このCEFRレベルを入試に利用するケースがあります。CEFRは国際的な言語能力の指標であり、英検CSEスコアと関連しています。これは、大学が求める英語力の基準が、より国際的な視点に立っていることを示唆しています。
    多くの大学で、単に「英検○級合格」というだけでなく、CSEスコアの具体的な数値が優遇措置の基準として用いられています。これは、大学側が受験生の英語力をより細かく、客観的な尺度で評価しようとしている傾向を示しています。以前は「英検○級合格」という合否が重視される傾向にありましたが、現在の大学入試では、多くの大学がCSEスコアの具体的な数値を優遇措置の基準として明記しています。特に、同じ級内でもスコアによって優遇内容が異なる大学が存在することから、「ギリギリ合格」ではなく「高得点合格」を目指すことの重要性が増しています。さらに、英検が不合格であった場合でも、CSEスコアが大学の定める基準に達していれば、入試に活用できるケースもあります(その際は「英検CSEスコア証明書」の発行が必要です)。このため、受験生は、単に目標級に合格するだけでなく、その級でできるだけ高いCSEスコアを獲得することを目標とすべきです。そのためには、リーディングやリスニングだけでなく、ライティングやスピーキングといった4技能全てのバランス良い学習が、CSEスコア向上には必要です。
    英検利用のメリットの一つは、大学独自の英語試験の負担軽減や、その分の時間を他の主要科目への対策に充てられることです。これは、受験生が限られた受験期間の中で、得意科目をさらに伸ばしたり、苦手科目を克服したりするための「時間」を創出できることを意味します。さらに、英検利用入試は一般選抜との併願が可能であり、早期合格の可能性や、第一志望校が不合格だった場合の「滑り止め」としての活用など、受験戦略の幅を広げる役割も担っています。したがって、英検取得は、単に英語力を高めるだけでなく、受験全体の「リスク分散」と「効率化」に貢献します。特に、難関大学を目指す受験生にとっては、英語の基準をクリアし、他の科目に時間を割くための「手段」として機能し、精神的な余裕ももたらすでしょう。

③英検合格へのロードマップ:戦略的な学習計画と注意点

  1. 目標設定の重要性:志望校に合わせた級・スコアを明確に
    大学受験で英検を効果的に活用するためには、志望大学・学部の募集要項を早期に確認し、必要な英検の級やCSEスコアを明確に設定することが必要です。多くの大学では「英検2級以上」「CSEスコア1980以上」が基準の一つとなっていますが、難関大学や特定の学部では準1級以上、あるいはさらに高いCSEスコアが求められることがあります。
    目標スコアを達成するためには、単に合格基準点を超えるだけでなく、各技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)でバランス良く高得点を狙うことが重要です。特に、CSEスコアは4技能の合計点で算出されるため、苦手な技能を克服し、全体的な英語力を向上させる学習が求められます。
  2. 最適な受験タイミング:計画的な準備で余裕を持った受験を
    英検のスコアは生涯有効ですが、大学入試で利用する際には、多くの大学で「願書出願の2年以内」に取得した英検の結果を求める傾向があります。そのため、計画的な英検取得が重要です。
    一般的に、高校2年生の秋頃から計画的に準備を進め、高校3年生の夏頃までに英検に合格しておくことが推奨されます。これは、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜の出願時期が高校3年生の夏から秋にかけて集中するためです。一般選抜で利用する場合でも、高校3年生の第2回試験(10月頃)までには取得しておくことが望ましいとされています。高校3年生の夏以降は、模試や過去問演習などの受験勉強が本格化し、英検対策に割ける時間が限られてくるため、早めの対策が受験全体の負担を軽減することにつながります。
  3. 効果的な対策法: S-CBT活用術
    英検S-CBTは、従来の英検と同じ資格が得られる試験形式です。従来型英検が年3回の実施であるのに対し、S-CBTは原則毎週土日に実施されており、同一検定期間内で最大2回まで受験できるため、受験機会が増えます。また、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの4技能全てを1日で完結できるため、受験のための準備と復習の効率が高まります。
    S-CBTのスピーキングテストはパソコンのマイクに向かって話す録音形式であり、面接官との対面形式に比べて緊張しにくいと感じる受験生もいます 。また、質問をもう一度聞きたい場合にボタン一つで聞き返せる機能もあります。ライティングはタイピングと手書きを選択できるため、タイピングが得意な受験生は文字数自動計算の恩恵も受けられます。
    S-CBTのスピーキング対策としては、自分のスピーチを録音して自己評価を行う練習が効果的です。発音やリズム感を向上させ、短時間で答える訓練を積むことで、本番でのパフォーマンスを高めることができます 。また、普段から英語で考える練習を重ね、沈黙を減らす工夫も有効です。
  4. 英検活用における注意点:知っておくべきポイント
    4-1. スコアの有効期限:いつ取得した英検が使えるのか?
    英検の資格自体に有効期限はありませんが、大学入試で利用する際には、多くの大学が「出願日から過去2年間以内」に取得したスコアのみを有効とするルールを定めています。合格証書の発行日をスコア取得日とする大学が多いですが、大学によって起算日の定義が異なる場合もあるため、必ず志望大学の募集要項で確認が必要です。

    4-2. 複数回の受験とスコア提出のルール
    英検は年に複数回受験できるメリットがあります。しかし、異なる受験回の4技能スコアを組み合わせて提出することはできません。

    4-3. 他教科との学習バランス:英語だけに偏らない戦略
    英検は大学受験において有効な手段となり得ますが、他の教科の得点力が伴わなければ、そのメリットを十分に活かすことはできません。英検取得によって出願の選択肢を広げたり、試験本番の負担を減らしたりするメリットを活用しつつも、他の科目の学習にも時間を割き、バランスの取れた受験勉強を進めることが重要です。特に、高校3年生の夏以降は受験勉強が本格化するため、英検対策に時間を使いすぎると、志望校の対策が手薄になる可能性もあります。

⑤最後に:英検を最大限に活用し、合格を目指そう!

大学受験における英検の活用は、合格を目指す上で重要な戦略の一つです。多くの大学が英検の級やCSEスコアを、出願資格、英語試験の免除、得点換算、加点、そして合否判定の参考資料として積極的に活用しています。特に首都圏の主要大学では、その利用方法が多様化しており、受験生は自身の英語力を示す機会を得ることができます。

英検が広く利用される試験として定着し、CSEスコアが英語力評価の指標となっている現状を理解することは、効果的な受験戦略を立てる上で必要です。単に目標級に合格するだけでなく、高いCSEスコアを目指し、4技能をバランス良く伸ばす学習が、より有利な条件を引き出すことにつながります。また、英検S-CBTの活用は、受験機会の増加や1日完結型という利便性から、忙しい受験生にとって有効な手段となるでしょう。
しかし、英検活用には有効期限や大学ごとのルール、そして他教科との学習バランスといった注意点も存在します。これらの点を踏まえ、高校生活の早期から計画的に英検対策を進めることが、受験直前の負担を軽減し、落ち着いて本番に臨むことにつながります。

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