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【高校受験】神奈川県 私立高校「オープン入試」の仕組み
神奈川県の高校入試、特に私立高校の受験システムは独特で複雑です。その仕組みを正しく理解しているかどうかが、納得のいく進路選択ができるかどうかの分かれ道となります。
一般的に神奈川県の私立入試といえば、中学校の成績(内申点)に基づいて事前に合格の可能性が決まる「公立併願(併願確約)」などが主流です。しかし、内申点に依存しない「オープン入試」という選択肢もあります。
神奈川県の「オープン入試」について、その仕組み、実施される背景、一般的な入試との違い、そして受験する前に知っておくべき実態について解説します。
1. 神奈川県の私立入試における「2つのルート」
まず、オープン入試を理解するためには、神奈川県の私立入試の全体像を把握する必要があります。神奈川県の私立高校入試は、大きく分けて2つのルートが存在します。
ルート1:入試相談を経る入試(推薦・一般専願・一般併願)
神奈川県の私立入試の大多数を占めるのがこの形式です。例年12月15日解禁の「入試相談」という仕組みがベースになっています。 これは、受験生の中学校の先生と高校側の先生が事前に協議を行い、「高校側が定めている内申基準」をクリアしているかを確認するものです。この相談を通っていれば、当日の試験は形式的な確認となることが多く、事実上の合格が約束される形になります。いわゆる「滑り止め」や「確約」と呼ばれるものは、このルートを指します。
ルート2:オープン入試(フリー受験)
今回解説するのが、この「オープン入試」です。これは、事前の入試相談や内申点の基準値は原則として合否に直結しません(一部、欠席日数などの出願資格がある場合を除く)。入試当日の学力試験(主に3教科、一部5教科)の点数のみで合否を決定する、いわば「実力一本勝負」の入試形態です。
2. オープン入試の具体的な仕組みと特徴
オープン入試には、他の入試形態とは異なる明確な特徴があります。
内申点が合否に関係しない
最大の特徴は、調査書(内申点)の数値が合否判定に使われない、あるいは参考程度にとどまる点です。一般的な併願確約では「英語が4以上」「9教科の合計が38以上」といった明確な基準があり、1ポイントでも足りなければ基本的に出願できません。しかし、オープン入試では内申点が基準に達していなくても、当日の試験で合格最低点を上回れば合格することができます。
東京都や他県の私立入試との類似性
「当日の点数で合否が決まる」というのは、入試として当たり前のことのように思えるかもしれません。実際、東京都の私立高校の一般入試や、大学入試などはこの形式が基本です。しかし、神奈川県では「入試相談(確約)」のシステムがあるため、この「当日点勝負」のオープン入試が、むしろ特殊な枠組みとして扱われています。
実施している高校の傾向
すべての私立高校がオープン入試を行っているわけではありません。実施しているのは主に以下のような学校です。
- 大学附属校: 早稲田・慶應・MARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)の附属校など。これらはそもそも確約制度を持たないことが多く、全員が一般入試(オープン入試)で競います。
進学校: 国公立大学への進学実績を重視する進学校。高い学力を持つ生徒を広く募集するために実施しています。
別枠として実施する学校: 一般的な併願確約入試を行いつつ、定員の一部(例えば30名など)をオープン枠として設定し、内申点が足りない生徒にも門戸を開いている学校があります。
3. どのような生徒が受験するのか
オープン入試は、誰でも受ける入試というよりは、特定の目的を持った生徒が受験する傾向にあります。
内申点と実力に乖離があるケース
中学校の実技教科が苦手だったり、提出物の評価が低かったりして内申点は伸び悩んでいるものの、模試の偏差値は非常に高いという生徒です。「内申基準では志望校に届かないが、実際の学力ならその高校の授業についていける」という生徒にとって、オープン入試はチャンスとなります。
私立第一志望での再チャレンジ
どうしても行きたい私立高校があるものの、内申基準に届かなかった場合、一般入試(オープン入試)で再チャレンジをするケースです。
4. オープン入試の「倍率」と「難易度」の実態
オープン入試を検討する上で避けて通れないのが、その厳しさの理解です。入試相談を経た入試とは全く異なる競争となります。
見かけの倍率と実質倍率の違い
入試相談を経た入試(併願確約)の実質倍率は、ほぼ1.0倍です。これは事前に合格できる生徒だけが出願しているためです。一方、オープン入試の実質倍率は、2倍から5倍、人気校や大学附属校ではそれ以上になることも珍しくありません。 「受ければ受かる」ものではなく、「定員に合わせて合格者を絞り込む」選抜試験であることを理解する必要があります。
問題の難易度設定
多くの学校において、オープン入試の問題は、公立高校の共通入試問題や、その高校の推薦入試問題よりも難易度が高く設定されています。教科書の基本事項を暗記しているだけでは正解できない、思考力や応用力、処理速度を問う問題が出題されるのが一般的です。これは、内申点に頼らずに受験する生徒たちの学力層が総じて高いため、差をつけるために問題のレベルを上げる必要があるからです。
5. 入試日程とスケジュールの構造
神奈川県の私立高校入試は、日程が短期間に集中しています。オープン入試を受ける場合、スケジュールの把握が不可欠です。
2月10日が中心
神奈川県の私立高校入試解禁日は2月10日です。入試相談を経た一般入試も、オープン入試も、この2月10日から一斉にスタートします。多くの学校が2月10日、11日、12日のいずれか、あるいは複数回の日程で試験を行います。
併願校との兼ね合い
オープン入試は不合格になるリスクがある入試です。そのため、多くの受験生は「必ず合格できる高校(併願確約校)」を確保した上で、オープン入試に挑みます。
公立高校が第一志望の場合:併願確約校の試験(または書類選考)と、オープン入試の日程が重ならないように調整する必要があります。
私立高校が第一志望の場合:本命のオープン入試の日程と、安全校の日程を戦略的に組み合わせる必要があります。
6. まとめ
神奈川県の高校入試において、オープン入試は「内申点という過去の評価」ではなく、「当日の学力という現在の実力」で受験できる制度です。
内申点が足りずに志望校を諦めかけている生徒や、より高いレベルの環境を求めている生徒にとっては、チャンスといえます。
しかし、併願校(滑り止め)を確保した上で挑む、あくまで「挑戦の場」としての側面が強い制度でもあります。
この制度の概要とリスクを正しく理解し、ご自身の志望校や現在の学力状況と照らし合わせて、受験プランの一部に組み込むかどうかを検討してみてください。