2019年度 神奈川県公立高校 学力検査分析

神奈川県公立高校 適性検査分析

年々難易度が上がり、科目によっては全国トップレベルの難しさと言われている神奈川県公立高校学力検査。
科目ごとに見れば難易度の動きは一様ではありませんし、意外な出題に驚かされることもあります。

実際のところ2019年度入試はどうだったのでしょうか。

学力検査が行われた当日の夜、Qゼミ中学部入試分析室のスタッフが集合し、一斉に各教科の学力検査問題を解き、その特徴をまとめました。
中2生以下、これから高校受験をするみなさんの参考になればと思います。

英語

ポイント3つ

  • 形式的な変更はなし。ただ・・・
  • 問3、問4の難易度UP。問8も昨年度に続き確実な読解力が必要。
  • 高得点を取るには「確実な文法力・速読力・読解力」が不可欠。

国大Qゼミ佐鹿聡洋先生
分析担当:佐鹿 聡洋先生

<総評>
出題形式としては数カ所の変更があった昨年度からの変更点はなく、平均点も昨年度と同じくらいかというのが一読の印象であるが、各大問で要求される学力が確実に高くなったと感じる。
例えば問3の適語句選択問題では時制と主語を複雑に混同した問題や用法が確実に分かっていないと迷う前置詞の問題が出題されるなど、過去問では一問も落とさないのに苦戦した受験生もいたと思われる。
また問4の語順整序では(ウ)で中学生が動詞でも名詞でも知っているwatchと、動詞でも前置詞でも使うlikeを入れることでどのように組み合わせるかを非常に分かりにくくした問題が出題され、正解出来たとしても大きく時間をロスした人もいるだろう。
問5の英作文は昨年度同様、一筋縄ではいかない疑問表現が要求され、かつ一人称の疑問文にする必要があるなど正に実用を意識した「コミュニケーション力」を試されており、大学入試での4技能を意識しているとも取れる問題だったことが印象深い。
問6~8の読解については昨年度と問題数も形式も同じだが、全国でも屈指となった英文の長さは相変わらずで速読力は勿論、正確な読解力が求められる問題であった。
特に問8は昨年度と同じく、絵(今年は避難経路地図)を絡めて細部まで正しく把握していなければ正解出来ない問題も出されている。
50分で全て正解するためには前半の文法では迷うことなく正答を出せる「確実な文法力」、そして後半の英文読解では一読で正確に理解出来る「速読力・読解力」が要求されるなど、本物の英語力が不可欠であり、全国的に見ても難易度の高い入試と言える。

<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
入試に対応出来る英語力は一朝一夕で身につく物ではありません。学年に応じた①単語力・②基礎文法力を確実に積み上げ、その上に③英作文力・④英文読解力(速読力)を構築しなければ、全く歯が立たない問題です。ただ逆に言えば中学で習得すべき英語力が定着していれば、目標点はクリアできる問題です。
今の自分は上記①~④のどこにいるのかを分析し、早速今日からその克服に向けた「継続的」な勉強を始めましょう!

数学

ポイント3つ

  • 分数処理能力
  • 新傾向問題への幅広い対応力
  • 記述力<思考力、図形の証明がさらに優しく

国大Qゼミ島津寿理先生
分析担当:島津 寿理先生

<総評>
昨年より難化。複雑な分数処理と新傾向の出題により、得点低下が予想される。
問1 計算問題 15点
問2 小問集合(基礎) 22点
問3 小問集合(応用) 14点
問4 関数 14点
問5 確率 10点
問6 空間図形 14点
問7 平面図形(円) 11点
問1・問2は確実に正解できる問題。とりこぼさないかの勝負。問3は、すぐに解けないときは、いったん飛ばすべき問題。関数の傾向は例年通りだが、(イ)直線の式でやや複雑な分数処理が必要となった。(ウ)も同様に、複雑な分数の計算を確実に処理できる能力が求められた。確率は、ほぼ例年通り。ルールを理解するための読解力が鍵。空間図形も、ほぼ例年通り。(ウ)は展開図を書いてから外側に直角三角形を自分で書き込む難問。平面図形(円)の証明は昨年と同じく穴埋め形式で、史上もっとも簡単な問題だった。一方、(イ)と(ウ)は新傾向。(ウ)について、ここでも複雑な分数処理が絡んだ。

<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
・解ける問題を確実に
入試問題の出題傾向は、ある程度決まっています。まずは神奈川県の県入試過去問等で傾向をつかみましょう。そして、解ける問題で絶対にミスをしないように訓練しましょう。入試対策に限らず、普段の学習からケアレスミスを減らす意識を持って臨んでください。それこそが数学の得点アップ(安定)の1番の鍵です。
・幅広い対応力を
例年、しっかり準備をすれば60点はとれましたが、今年はそれが難しくなりました。その要因は複雑な分数の計算と新傾向の出題です。全国入試問題などで様々な問題に触れ、経験を積みましょう。はじめはできなくても構いません。間違え直しを徹底してください。難しい問題ほど、過去に同じような問題を解いたかが鍵となります。

国語

ポイント3つ

  • 出題分野(漢字/文法・古文・小説文・論説文・グラフ読み取り)は例年を踏襲
  • 小説文・説明文ともに文字量が多く、時間配分に注意を要した。
  • 古文の出典が、中国の説話を元にした教訓をテーマにしていた。

国大Qゼミ田上清貞先生
分析担当:田上 清貞先生

<総評>
昨年と同様の出題分野・問題数・配点であった。難易度も昨年同様か。
漢字は「読み」の「彫塑」(ちょうそ)が難しかった。
古文で慣れない中国名の登場人物の把握に苦戦したかもしれないが設問の選択肢は平易であった。
小説文の問題では、素材文だけで3ページを超えており、ここで時間を使いすぎると後半の問題を解く時間が圧迫されたものと思われる。物語の主要な登場人物が3名で、場所や時系列が頻繁に変わるため、ストーリーを追うのに苦心したかと思われる。設問は心情の理解を中心に聞いており、平易であった。
説明文はAI(人工知能)をテーマとする出題であった。ルーティンワーク、クリエイティブ、ロジック、などの外来語も多く出てきており、内容に関する理解の差がでるテーマであったと思われる。ただ設問の選択肢はそれほど難しくなく、消去法も駆使することで正答にはたどり着けたと思う。
グラフ・表の読み取りは記述内容の採点裁量の幅が広い設問であった。

<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
・長文の読解問題を解くポイント
日常の学習から速読を心がけ、心情の理解や文章の主旨の理解に必要な部分とそうでないところをメリハリをつけて読むことが肝要である。またAI(人工知能)など最近話題となるテーマに関する情報を意識して、日ごろから考える癖をつけておくのが肝要でしょう。ロジックなど日常で意味が分からない外来語を見つけたら、その意味をすぐに確認しておくことも文章理解のジャンルを広げることとなろう。
・基礎学力の充実を
漢字・文法・古文など、教科書で習う基礎知識をしっかり学習することが重要です。また、記述の問題に関しても、普段のノートの記述の仕方や、定期テストに向けて学習する際の演習が基礎となります。
・入試過去問を解こう
全国の公立入試問題などで様々な文章問題にあたっていこう。

理科

ポイント3つ

  • 生物・地学・物理・化学、各25点ずつのバランス型!
  • 出題学年の偏りが続く
  • 基礎知識+読解力


分析担当:伊沢 淳先生

<総評>
今年の難易度は昨年と比べかなり易化した為、平均点は大幅に上がる可能性がある。記述は20字以内の記述問題の1問のみ、6択問題は5問出題され、完答問題は3問と昨年と大きな変更はなかった。
全体を通してみると一問一答形式に近い問題も多く文章量も減った為、時間的な余裕もあったと思われる。内容としても「基礎」がしっかりしていれば答えが導き出せる問題が多かったため、受験生にとっては解きやすかった問題となった。
配点は3点×12問、4点×16問の計30問と問題数・配点ともに昨年と同じ。
学年別配点は中1(38点)、中2(37点)、中3(25点)となった。昨年と比べ1年生からの出題が多かった。ここ数年は3年生からの出題が少ない為、早めの準備が必要。しかし、出題学年に偏りのある傾向が今後も続く可能性があるので、どの学年から出題されても大丈夫なように準備する必要があります。

<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
・高得点をとるポイント
基礎知識定着を100%を目指しましょう。暗記は最低限と考えて下さい。
理科では表面的な知識だけでなく、実験や現象において「なぜそうなるのか」などの根拠がとても大切になります。疑問を常に持ちながら学習するようにしましょう。
・多角的に問題を見れるように!
数学でも言えることですが、答えに辿り着くまでの道(解法)は一つではありません。答えが出たら他の解き方がないのかを考える癖をつけましょう。
また、一つの言葉に対して「何通りの聞き方があるのか」その内容への理解の深さが問われています。また、文字数が増えると「読み終わらない=解き終わらない」こともあります。国語同様、読むスピードが今後も必要になります。

社会

ポイント3つ

  • 去年よりも難易度若干UP。
  • 歴史の難易度が下がり、地理・公民の難易度UP。
  • 地歴公混合!

国大Qゼミ栗山美穂先生
分析担当:栗山 美穂先生

<総評>
昨年度以降、社会は問題が大幅に難化したこともあり、今年の受験生の社会対策が大幅に変化した。今年度、難易度や問題形式に大幅な変化はなかったが、地理・公民の内容に若干の難易度UPが見られた。歴史は、時代の並べ替えの問題数が減少し、去年のような並べ替える選択肢を絞る問題は無くなった。その結果、歴史の難易度は他と比べ下がっただろう。ただ、歴史は高校の世界史・日本史を混合した問題も見られ、来年度に向けて、その対策を重視する必要があるだろう。
公民は、去年に引き続き、為替に関する問題が出題された。これは苦手とする生徒が多いため、来年度も引き続き対策が必要である。また、公民の語句レベルは、学校の教科書では太字ではない語句の出題が見られた。社会の語句暗記では、歴史や地理を多く学習しがちだが、公民に関する語句も幅広い学習をする必要があった。
今年の社会も平均点のUPはおそらく無いと思われる。

<これから受験をする生徒さんへ ずばり対策方法>
・「ずばり!幅広い知識が受験を制す」
中1~中2の範囲が70点を占めるため、中3からの復習では間に合わない。
定期テストと同様、教科書でも太字になっていないような細かな知識を幅広く学習する必要がある。
歴史の並べ替え問題は、来年度以降も出題が予想される。高得点を取りたい受験生は年号も暗記していこう。

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